今週もひどいドラゴンボールZ劇場版 復活のフュージョン!!悟空とベジータ

本編の展開を反映し、悟飯達新世代は再び脇に追いやられた。個性の薄い新世代が脇に戻るのは仕方ないが、悟空達が出張ってくるとワンパターンに陥るという実績があるため、その点の不安が拭えない。
地獄行きの悪しき魂を浄化する装置が壊れた、という事が事件の発端となったが、事件が起こる前に浄化されたはずのフリーザやその他の悪人が邪悪なまま、という事に対する説明が全くない。また浄化できるにも拘わらず、地獄で拷問する意味もわからない。浄化が気休め程度の効果なら、その気休め程度の装置のために大事件が起こるのは、ハイリスクローリターンと言える。小悪党程度なら浄化できるということなのか。根幹となる設定がよくわからない。
閻魔大王がジャネンバの結界に閉じ込められたことであの世の秩序が乱れ、地球の死者が復活。フリーザが大軍を率いて地球を襲撃したが、前々作のブロリー同様悟空が死んでいるという点で違和感がある。仇がいない世界で暴れても虚しかろう。厳密に言えば仇はトランクスだが、フリーザは名前も正体も知らない。口調もやはりGT同様敬語だった。そんなにフリーザ=敬語というイメージが強いのだろうか。
フリーザの指揮下にギニュー特戦隊がいるのは当然として、ボージャックまで混じっているのはさすがに不自然だった。しかもそのボージャックはちらっと映っただけで出番がない。長々戦うわけにはいかないにしても、フリーザがやられたくらいで引き下がるような敵ではないだろう。ただのお遊びだとは思うが。結局蘇った悪人は悟飯と悟天トランクスに出番を与えるためだけに存在したようで、最後まで二組を苦戦させることはなかった。ジャネンバとの戦いに移ってからも、悟天らと軍隊との戦いが度々挿入されたことに意味はあるのだろうか。
中盤からジャネンバとの戦いに移行する。悟空は相変わらず最初は超サイヤ人に変身せず、変身したかと思えばすぐさま「3」に変身。奇妙な段取りだ。黒髪の悟空が活躍している絵が欲しいとかそういう事情でもあるのだろうか。かつての映画なら「3」になっても尚苦戦しそうだったが、さすがに変身前のジャネンバはあっさり撃破。「一気に片を付ける」という宣言通りになるのは珍しい。
さらにジャネンバが変身してからも、いつもの惨敗ではなくそこそこ良い勝負をしていた。一方的に殴られ続けるだけの、ストレスの溜まる戦いではない。ただ圧倒されるだけでなく、なんとか抵抗できているだけでも随分印象が変わる。ジャネンバもトリッキーな戦い方で、見ていて面白い。
悟空がやられると今度はベジータが登場し、久々に面倒臭い性格を遺憾なく発揮した。本当に面倒臭い。共闘するにも駄々をこね、フュージョンするにも口答えをする。それがベジータの個性とはいえ、少しは仲の良い息子達を見習って欲しい。
死んだはずのキャラクターを再登場させる際、勢いで登場させて理由は曖昧にするというパターンの作品も見受けられるが、今回ベジータが登場した事については「閻魔大王が封印されているから」という至極真っ当な理由が用意されていた。そもそもあの世とこの世の秩序が崩壊したのだから、ベジータが自由になっていても不思議ではない。
初回のフュージョンは失敗し、その状態で30分逃げ切らねばならなかった。ギャグでごまかしてやりきるのかと思いきや、ギャグもありながらも、「相手の技を見切ることに長けたジャネンバは、できそこないのゴジータの動きが読めない」と一応理由が用意されていた事に驚いた。ジャネンバが動きを読むというのもその場限りの唐突な設定ではなく、変身前から「動きを見切られているみたいだ」と悟空に言わせている。ベジータの件といい、やけに説明が丁寧だ。
次のフュージョンは成功し、ジャネンバをたやすく撃破。主人公側がパワーアップして敵を圧倒といういつものパターンではあるものの、フュージョン元気玉や気を分け与えることに比べてはるかに説得力がある。元気玉同様反則的ではあっても、他力本願ではないのが良い。力をくれぇー!オラに元気を分けてくれぇー!……なんて、あんまり何度もやる事じゃない。合体にも言えることだが。
今回はあの世が舞台で参戦できる人物が限られていたということもあり、懸念していた中期のマンネリワンパターンの復活はなかった。中だるみも特に感じず、キャラクターも相応の強さをそれぞれ発揮していた。多彩な技を持つジャネンバも、ブウの進化系といった感じで良かった。復活した死者の描写に危機感も意味もさほど感じられない点を除いては、良作だった。やはり王道展開で白熱した勝負をしてくれればそれで良いということだ。