今週もひどいドラゴンボールZ劇場版 超戦士撃破!!勝つのはオレだ

またしてもブロリーが敵である。製作者がブロリー好きなのか、ファンの要望に応えての事なのか。個人的には敵にはしっかりとした人格があった方が良いので、少々お狂い気味にあらせられるブロリーはそれほど好きではない。今回に至っては半端な復元のため、完全に人格がなくなっている。ほぼ別人と言って良いだろう。人ですらない。

世界一の武道家としてミスターサタンが敵の目標になるとは、時代も変わったものだ。少し前なら武天老師だったというのに。今回登場するのは悟天、トランクス、サタン、18号という面々で、もはや一体誰が主人公なのかわからなくなっている。悟空の死の影響はやはり大きかったようだ。新しい主人公だったはずの悟飯など影も形もない。

前作のチョイ役であるはずの祈祷師が今作も登場。「宇宙ポッドからブロリーの血液を採取した」そうだ。宇宙ポッドなんて難しい言葉知ってんな祈祷師。ブロリー復活に加担した他の者達は助かっている者が多いものの、この祈祷師は容赦なく殺されている。人間、それも地球人で明確に死ぬのは珍しい。

今回はブロリーと戦う寸前で超サイヤ人に変身。歴代最速かも知れない。当たり前のことを当たり前のタイミングにしてくれると本当に気持ちがいい。今まで何だったのか。さらに攻撃を一発二発喰らった程度ではサイヤ人に戻りもせず、相手がスローということもあって最初は良い勝負だった。こういう戦いをもっと前の作品からやってもらいたかった。欲を言うなら、大人の戦士でやって欲しかったところだ。

「最初は」どころか、良い勝負が終始続いている。今までのような極端なワンサイドゲームがほとんどない。劣勢になるきっかけも、悟天がサタンを助けに行こうとして、というやむを得ない状況で、「ただ戦って、ただやられる」という見ていても疲れる戦いではなかった。主要な戦士が出そうにないという点で期待していなかったが、今までの、言ってしまえばクソ面白くないワンサイドゲームに比べて、本当にアクションとして面白い。さらに前回同様作戦まで立て、それが成功している。主要キャラが出ない上にワンパターンでは、ファンの心が離れると懸念してバトル面を面白くしようとしたのだろうか。

ブロリーは途中で退場し、有害な培養液をどうやって処理するか、という問題に変わったのも今までの映画にはないパターンだった。攻めるねぇ……。ワンパターン、マンネリの極みだったドラゴンボール映画にここでこんな変革が起きるとは思わなかった。敵の造形といい展開といい、少々ドラゴンボールらしからぬ要素が多いものの、「らしさ」にこだわってマンネリ化するくらいなら、毎回違うパターンにする方が余程いい。

ただ、さすがに悟飯もベジータもピッコロも全く出てこないのは味気なかった。事件の規模が小さすぎるという印象は拭えない。この辺は、ベジータが突出した強さになって扱いづらいというところもあるのかも知れない。

この映画を観て感じるのは、「どうして今までこれが作れなかったのか」という不満だ。なかなか超サイヤ人にならなかったり、強いはずのキャラクターが相応の強さを発揮しなかったり、やられっぱなしだったり、最後は必ず元気玉だったりと、今までのバトル描写には2つも3つも不満があった。同じ話で同じ敵でも、バトルの出来次第で面白さは激変する。もう少し早く気付いて欲しかった。