今週もひどいドラゴンボールZ劇場版 危険なふたり!超戦士はねむれない

一時キャラクターが世代交代していた時期に作られたもののため、かつての主要キャラはほとんど出番がない。まあ、パンチがない。悟空・ウーロン・ブルマ・クリリンと比較して、悟飯・悟天・トランクス・ビーデルという面子のパンチのなさよ。やはり性格は極端にしなければならないらしい。参考になる。何の参考かは知らない。
悟天が突然大声を上げて泣き出し、その泣き声でブロリーが7年ぶりに目覚めた。ブロリーが悟空の泣き声にトラウマを持っているという設定を活かした、良い目覚め方であると思う。悟天が下らないことで泣きすぎだろうと最初は不満だったが、それも嘘泣きだとわかってホッとした。
悟天とトランクスは割とすぐ超サイヤ人になったものの、普通のサイヤ人に戻るのも早かった。劇場版のサイヤ人はなかなか超サイヤ人にならない上、ちょっと攻撃を受けただけですぐ元の姿に戻るからモヤモヤする。二人がブロリーに敵うわけはないものの、子供ならではの緊張感のない戦いで、今までの極端なワンサイドゲームよりは新鮮な気持ちで見られた。泣き虫でくそ真面目且つ戦いが嫌いな子供時代の悟飯と比べても、好戦的なのは見ていて気持ちよい。
悟天とトランクスがブロリーに追いつめられる中、悟飯が颯爽と登場する。ブウ編の展開を知っているだけに、悟飯に全く頼もしさを感じない。ブウと比べるから弱いんであって、ブロリー相手なら十分強いはずだが、印象というのは恐ろしいものだ。制作の時期的に、悟飯が自由に超サイヤ人2になれることは明らかになっていなかったようで*1、悟飯は見た限り普通の超サイヤ人にしかなっていない。それではブロリーに勝てないのも無理はない。
今回も、やはり悟飯はすぐ超サイヤ人にならなかった。劇場版もそろそろ完結だというのに、この期に及んでまだ超サイヤ人を出し惜しみするのには心底呆れる。誰の責任だ?監督か?脚本か?演出か?「超サイヤ人になる」というところで一回盛り上げたいのかも知れないが、なるべきところでならない時点で、見る側は興醒めだ。たとえば未知の敵に対してなら、すぐ超サイヤ人にならないのも良いとしよう。相手は伝説の超サイヤ人ブロリーであることがわかっていて、既に超サイヤ人になっているのだ。どこに出し惜しむ理由がある?
参戦キャラクターが少ないこともあって、ただ一方的にやられ続ける、という展開でなかったのは好印象。面子にパンチがなくても意外と見ていられる。ダメージは与えなくても、ブロリーを振りほどいたり一矢報いたりしているのも、今までのワンサイドバトルとは違って見えた。また何のビジョンも持たずに戦うのではなく、子供は「シェンロンを呼んで退治してもらう」、悟飯は「マグマに落とす」と、それぞれ作戦を考えて実行しようとしているのも良かった。今まではただただ考えなしに敵に突っ込んで、危なくなったら「みんなオラに元気を分けてくれえぇ!」と他力本願で倒すという展開ばかりだった。どちらの作戦にもつっこみどころはあるとはいえ、ワンパターン地獄から脱却したことは素直に素晴らしいと言いたい。
ただ、どうしても「星を破壊するような敵にマグマが効く」という感覚にはついていけない。彼等は惑星が消え去るような爆弾を投げつけ合いながら戦っている。「星は壊せてもたった一人の人間は壊せない」という言葉の通り、彼等は地球が粉々になるような爆発を浴びても死んでいない。それでマグマが通じるというのは考えにくい。星を壊すようなエネルギー波でも、マグマ以下の攻撃力なのだろうか?
クリリンの「なんで俺だけ」ネタで笑ったことは今まで一度としてなかったが、今回のクリリンは吹っ飛ばされ方が面白かった。
相変わらず良い勝負というものがなく、悟飯がまともにブロリーと戦っている時間は非常に短かった。せっかくテレビアニメよりも良い作画なのだから、もうちょっと良い感じに殴り合って欲しいのだが、この願いが叶えられることはもうなさそうだ。原作を見てみても、ただただやられるだけ、という展開は多くない。ラディッツにしてもフリーザにしてもセルにしても、殴っては殴り返されという過程を経て主人公側が追いつめられている。時間がないわけではない。毎度、絶望感を演出するための時間はたっぷり取られているのだから。
終盤はセル戦の親子かめはめ波をほぼなぞった展開だった。全く同じと言ってもいいくらいだ。原作を超える映画を作ろうというのではなく、あくまでも原作に追従、踏襲するという意志がビンビンに感じられる。そうであれば、バトル面でも原作の方法論をもう少し取り入れて欲しかった。原作そのままであることに問題はあるものの、やはり今までのパターンと違うというだけである程度は満足できる。それくらい、Z中期の映画はどれもこれも似たパターンだった。よくぞあれほど同じ展開を続けてきたなと感心するくらいだ。キャラクターの人間関係やパワーバランスも変わってきている。残り少なくなったこれからの作品は、ワンパターンではなさそうで期待できる。
映画の内容そのものとは関係ないことだが、何故かこの映画だけはサウンドトラックを所持している。昔に何度もBGMだけを聞いていたせいか、映画を見ている時にBGMがやたら耳について仕方なかった。サウンドトラックは15年は軽く聞いていない。それでも記憶に残っているのだから、音楽の力は凄まじい。
今回はピッコロもベジータも欠席だった。ピッコロはともかくとして、ベジータがいれば余裕ではないにしても一人でブロリーに勝てていたと思うと、悟空とベジータがぶっちぎりで強くなっていた、という状況の変化は面白い。*2

*1:天下一武道会前の修業で勘を取り戻してコントロールできるようになったという考え方もある

*2:ブロリー大好きっ子は超サイヤ人2クラスで勝てるわけがないと言いそうだが