また最初は悟飯プッシュだった。いい加減、別のアプローチがないものか？劇場版か、はたまたアニメのみの「ナメック星人は口笛が苦手」設定がここで初めて御目見得となった。「ピッコロ」なのに高音域が苦手って、どういう皮肉だ。悟飯パートはすぐに終わり、地球に惑星が近づいてくるという急展開になった。口笛が苦手という描写は後々必要になってくるし、挿入歌もなく、今回の悟飯パートはそれほどストレスではなかった。
スラッグは地球到着から数分の間に、たわいもないことで２人も部下を殺した。こういうアホの親玉で組織が成り立つとはとても思えない。ただスラッグの部下は直射日光が弱点の魔族らしい。どこの魔族だ。少なくともスラッグが生み出した魔族ではないだろう。ナメック星人はそんなポンコツじゃなかったはずだ。しかしスラッグ自身もヘルメットを着用しているところからして、ポンコツナメック星人の可能性もある。部下を自分で生み出せるなら代わりはいくらでも利き、すぐ殺しても不都合はないだろう。弱点からすると太陽拳は効果覿面のはずで、是非使ってもらいたかったところだ。
今回は幹部クラスが割と頑張っている。悟飯では歯が立たず、ピッコロも悟飯をかばって負傷している。それぞれ固有の技も持ち、それなりに目立っている。しかし結局悟空によってあっさり倒された。悟空とその他の戦力差がかなり開いてしまっているようだ。やられた悟飯の姿勢といい、悟空と幹部二人との戦いといい、あからさまにギニュー特戦隊戦と似ていた。わざと似せているとしか思えない。劇場版で原作と似たシーンがあるのはどういう意図があるのかよくわからない。
幹部を圧倒した悟空も、スラッグには全く歯が立たない。善戦すらしない。何故か界王拳を使わず、すぐに元気玉の作成にとりかかった。しかし弱った地球では元気玉を作成できず、悟空は突然超サイヤ人のようなものに変化。唐突すぎて意味がわからなかった。何か前兆でもあっただろうか。当然スラッグを圧倒するものの、スラッグが自分の腕を引きちぎるのを見て我に返り、超サイヤ人０．５状態を解除してしまった。それ以後、二度とこの状態に戻ることはなかった。相手がグロい事をして（実際はナメック星人であるとわかってだが）変身を解除というのは、戻る理由として酷すぎないか。
今回やたら解説に入る界王によると、スラッグは１００％悪の心を持った超ナメック星人で、フリーザや超サイヤ人ですら敵わないかも知れないという。実際超ナメック星人というべき神コロ様は、フリーザや超サイヤ人を凌ぐ強さだった。ただ登場するタイミングがあまりにも悪かった。神と大魔王が合体するというこの上なくカックイイ展開であるにも拘わらず、人造人間編のシーソーゲームを前に酷い扱いのまま終わってしまった。フリーザ編真っ直中に「フリーザにも勝てただろうに」と言わせたインパクトは凄まじかったはずだ。それがあの結果に終わって、ピッコロファンとしては残念な限りだ。だ、だ、誰がピッコロファンやねん。
超サイヤ人という名前を頻繁に出す割に、悟空は今作で一度として超サイヤ人には変身していない。原作ではまだ変身していなかったのだろう。それで映画のタイトルが「超サイヤ人だ孫悟空」である。「映画で超サイヤ人が見られるらしいぜ！」と興奮して映画館に向かった子供達の気持ちを思うと、ＪＡＲＯに相談したくなる事案ではある。多分、この「だ」がミソなのだろう。「超サイヤ人だ」とすることによって、「超サイヤ人になったような気持ちで頑張ろうぜ！」的なあいまいさが含まれている。まあ、でも詐欺だろ。前作の時系列は悟空が重力修業をしている最中で、今作でもまだ超サイヤ人になっていないというのは、映画の製作スパンが短すぎるだろう。
巨大化したスラッグに悟空がやられると、そこからピッコロの奮闘が始まった。触覚を必死に引っ張る作戦が失敗すると、今度は自分の耳を引きちぎって悟飯に口笛を吹かせる。満身創痍の悟飯はなかなか口笛を吹かず、ピッコロはスラッグの手の中で必死に「口笛を吹くんだー！」と叫び続けるという変な状況がしばらく続いた。ようやく口笛を吹いてスラッグが苦しみ始めると、次は倒れた悟空にエネルギーを分け与えるため、必死にもがいて悟空の手を掴もうとしていた。ピッコロだけが頑張っているようで、この辺はどうもテンポが悪い。
敵の弱点を突くという映画では珍しいパターンではあったものの、超サイヤ人化の唐突さといい、口笛を吹いて悟空が復活するまでの過程といい、展開が少々ぎこちない印象を受けた。ピッコロの気を受け取った悟空は界王拳であっさりスラッグの腹に風穴を開け、太陽の気から作った元気玉でとどめを刺して終わり。超サイヤ人の要素を無理矢理入れようとして、変になってしまった気がしないでもない。
