今週もひどいドラゴンボールZ劇場版 とびっきりの最強対最強

今回の敵はフリーザという原作での敵の身内ということで、敵の目的は仇討ちというシンプルなものだった。ターレスやスラッグのように、地球をどうこうする計画を悟空達が阻止するという構図ではなく、クウラという復讐者を悟空達が迎え撃つという構図だった。その分「悟空達が異変に気付く」という前置きを入れる必要がないため、敵と戦うまでの時間が非常に短かった。

フリーザ戦後で悟空があまりにも突出した強さを持ったためか、悟空は序盤に深手を負って動けなくなった。うっすらと残る記憶では、クウラの部下に本気を出さずにやられたというイメージがあって良い印象は抱いていなかったが、実際には突然現れ攻撃してきたクウラの攻撃から悟飯を守って深手を負ったという経緯だった。超サイヤ人化のコントロールができないのであれば、これは仕方のない展開だろう。フリーザクラスの相手では、界王拳をしたところで防ぎきれるものではないし、悟飯をかばったのなら悟空本人の過失でもない。意外と無理のない展開だった。

悟空と悟飯は瓦礫に埋もれてしまい、発見したクリリンが重そうに瓦礫を持ち上げるというシーンがあった。「いやお前らもっと簡単に壊せし岩も持ち上げられるだろ」と心の中で突っ込んでいたら、「スカウターに検知されないようにして下さい」と悟飯が言い始めて、攻撃が跳ね返されたような気分になった。スカウターで見つかるから力が出せなかったわけだ。ゲームでは山を吹き飛ばすのにわざわざダイナマイトを拾ってくるという理不尽な展開があったが、この作品では気で吹き飛ばさない事にしっかりとした理由が作られている。突っ込みようがない。

またハイヤードラゴンが全速力で移動を始めた途端、スカウターで敵に見つかるという展開もあった。インフレして数値こそ読み上げなくなったものの、スカウターがしっかり機能している。敵も味方もちゃんと頭を使っているから心地よい。悟飯はスカウターで発見されないためにハイヤードラゴンを移動手段として使ったのだろうが、仙豆で力が漲ったドラゴンがスピードを上げて発見されてしまったという展開も、あまり無理が感じられない。ドラゴンがバカでも仕方ない。

ウィローやスラッグにみっともなくやられる、というギャグ要員として度々使われていたクリリンが、今回は真っ当に戦って敗れていた。クリリンをギャグとして使うことに違和感を覚えていたので、今回はストレスなく見られた。悟飯は相変わらず微妙な強さとして描かれている。もうほとんど空気だ。フリーザ戦ではそこそこ活躍していたというのに、クウラの部下にさえ善戦できない有様である。感情によって戦闘力が激変するとはいえ、一時的にでもフリーザ第3形態を焦らせる戦闘力があるなら、ピッコロとそこまで大差があるとも思えない。悟空やピッコロにかばわれる存在として描いた方が都合が良いということか。

導入が短い分バトルを長く描けるはずが、部下との戦いが長く、クウラと悟空との戦いは10分足らずだった。もう少し長い方が良かった。思った以上にクウラの第1形態と悟空との戦いが短かった。意外だったのは、悟空が超サイヤ人にならずして第1形態相手に優位に戦っていたということだ。お互いに変身した状態でも悟空が優位だったが、それほど拳を交える事なく、クウラがすぐに元気玉もどきを撃って勝負が決してしまった。部下との戦いを削って、もう少し殴り合いを描いて欲しかった。
超サイヤ人になった悟空は「クズ野郎!」とクウラに対して激高。映画という様々な制約がある中では仕方のない面もあるが、クウラが悟空にそこまでキレられるほどの事をしたのか、という気はする。映画の他の敵と違って、地球に壊滅的なダメージを与えたわけでもないのだから。他の映画でも唐突にキレた作品があった記憶がある。悟空はそんなにキレる子じゃない。悟飯じゃないんだから。
クウラは悟空のエネルギー波に押され続け、太陽にまで到達。なかなか大袈裟な展開である。いくらなんでも速すぎないか。蛇の道の実に150倍もの距離を数秒〜数十秒で到達してしまったわけだ。仮に30秒とすれば1秒500万キロ移動していたことになる。そんな数値はどうでもよいとしても、なかなか思い切った演出だ。「太陽まで飛ばそう」なんて発想なかなか出てくるものじゃない。
太陽に焼かれながら、クウラは「フリーザもまだまだ甘い」と言っていたことを思い出す。最後の最後で悪役の回想シーンが入るというパターンは珍しい。登場当初、フリーザを甘いと言い放ったクウラが「フリーザだけではなかった」と後悔しながら死んでいく。なかなか悪役に対して手厳しい演出である。映画の悪役の死に様としては最も印象的だった。

元気玉にも頼れなくなり、ここ最近のワンパターンからは脱却できていたように思う。わかりやすいオチの付け方ができなくなり、悟空の気合で何となく勝ってしまうようになる、とも言える。