今週もひどいドラゴンボールGT #53

七星龍

前半はパンを取り込んだ七星龍に攻撃できないよウエーンと、悟空がうじうじ悩む展開が続く。悟空はそんなことでうだうだ悩まない。そんなにバカじゃない。色々試してみて、どうしても救えないようならためらいなく殺すだろう。戦闘の天才である。ただ黙ってやられるということは、ない。
意を決してかめはめ波を放つものの、七星龍には通じない。「無意識の内に手加減していたから」だという。「今のじゃ5倍にもなっていない」と高笑いをする七星龍。その5倍だの10倍だのは一体何を基準にしているのか。超サイヤ人4が既に従来の超サイヤ人の数倍数十倍の強さであろうに、かめはめ波はさらにその10倍だというのか?それとも超サイヤ人3の10倍か?今シリーズの敵は、超サイヤ人1でもおつりがくるくらい弱そうだが。

無意識に手加減してしまうのでは打つ手はないと、早々に諦める悟空。額に埋まったドラゴンボールを引っぺがそうとするとか、いくらでも手はあるだろうに。GTの悟空はやけに諦めやすい。脚本家はベジータ戦で諦めたイメージを引きずりすぎではないだろうか。

絶体絶命のピンチになると、七星龍は「最後に孫と対面させてやろう」と意味不明な事を言い始め、何とパンの上半身を体外に出してしまった。「まさかこれで引っ張って解決だぜウオーじゃないよな……」という絶望にも近い不安感に襲われた。そのまさかである。悟空は「この時を待っていたんだ!」とわけのわからない事を言い始め、パンの体を引っ張り出してしまった。

いつから「この時」とやらを待っていたのだ?かめはめ波を出す前からか?だとしたら用意周到なものである。「あいつはきっとかめはめ波を出しても倒せずに諦めたオレを見て、『オレも鬼じゃないから最後に孫と対面させてやろう』とか言い出して体からパンの体の一部を出してきやがるに違えねえ。その時ひっぱっちまえばいいんだ!」と考えたのか?エスパーか?いや、こんなもんエスパーのレベルを超えている。むしろ自分の考えたことを現実にしてしまう能力者だ。七星龍が優位に立っているのはパンを体内に取り込んでいるからだ。そのパンを体外に出すだなんて一体誰が想像できようか。

バトル漫画では往々にして、「主人公が劣勢になった途端、敵がペラペラ弱点を喋ったり主人公の怒りの買うような事をわざわざやったりして自滅する」というパターンがある。伝統といってもいいかも知れない。だがそれでもあまり不自然に、茶番にならないように、クリエイター達は細心の注意を払っているはずだ。そういった配慮がこの作品からは感じられない。まったく大した知能バトルだ。

かつて悟空は、ブルー将軍の超能力を前にやられそうになった時、偶然将軍の苦手なネズミが通りかかって助かっている。今週は、いわば悟空が「あいつは見た感じネズミが苦手そうで、この洞窟の雰囲気からしてきっともうすぐタイミング良くネズミがやって来るにちげえねえから時間を稼げばオラの勝ちだ!」と考えて、それが実現したようなものだ。敵が油断するだけならまだいいが(それでも酷い)、それをまるで計算していたかのように言い張るから、尚更酷くなっている。

ここ最近非常にスケールの小さい戦いが展開されているが、その実ほとんど悟空が敗れても不思議ではない戦いだった。その意味では壮絶かも知れない。